牡牛座

いつもは見ないのに、雑誌の裏の星占いが目に入ってしまった。

出かける前で忙しいのに、こういうものは目に入ってきてしまう。それによると、私の星座である牡牛座は12星座中12位だった。
「トラブルの多い日!気をつけて!」
うわあ…見なきゃよかった、と思いながら身支度をして、玄関に向かう。同居している母に
「仕事、行ってきます」
と声をかける。母が小さな声で
「行ってらっしゃい」と返事する。

40歳にもなって私は暗示にかかりやすく、占いなんて見て最高だの最悪だの言われた日には何でも占いに結び付けて考えて、一喜一憂してしまう。もちろん、自分で自分に
「あんな適当に書かれたもの信じて馬鹿じゃないの?」
と突っ込みながら。

なんで私はこういうものに弱いんだろう?12星座中12位と言われて、本当にそのまま私の日常に酷いことが起こって、自分にはどうしようもないと思っているんだろうか?

そこまで考えた時、結婚していた元夫の顔が一瞬フラッシュバックして、私は立ち止まった。いや、正確には歩けなくなった。

私は、7年間結婚していた元夫に精神的DVを受けていた。自分のルールに私が従わないと、何時間でも説教され罵倒された。娘が5才になったころ離婚して元夫から離れたが、あの日々は私のトラウマになってしまっている。

どうしようもないこと、防げないこと、考えても努力しても無駄なこと、私の意志なんて役に立たないどうでもいいこと…と、繰り返し繰り返し思い知らされたあの日々。

自分のこだわりや考え方を押し付けてくる夫に、自分はこう思うとかこうしたいとか伝えて、話し合ったり折り合いをつけたいと思っていた。
人と人は理性的に話し合って分かち合って、協力して暮らしていくんだ、と娘にも見せたかった。まだ心が柔らかくて何でも吸収してしまう娘のためにも、両親のやり取りはお手本になるようなものでありたかった。

夫はまったく無視した。私の考えも、姿さえ目に入っていないように完全に無視して、自分の世界をお前は受け入れるべき、と言い続けた。

私は夫の攻撃で傷つき萎縮して(傷をいやす間もなく次の一撃が来るので傷は治らない)、話し合うことも自分の考えも手放してしまった。娘へのお手本どころではなかった。

もう夫は私の目の前にいないし、数年に一度娘に関することの手続きの時に事務的なやり取りをするだけで、話をすることもない。
でも、恐怖というものは心のメモリーに強く刻まれてしまい、その人の行動も考え方も縛るのだ。

あの恐怖と、虚無感を覚えている。

自分でどうにもならないこと、努力しても無駄なこと、星占いみたいに勝手に決められて変えようとしても無駄なこと。

私は、元夫といた7年間に、自分を諦めることを覚えてしまった。

ほんの少し立ち止まっていた何分間かに、元夫と暮らした日々の感覚が怒涛のようによみがえって、気が付いた時には汗をびっしょりかいていた。