星占いの結果

乗るはずの電車の時間を思い出して、駅までの道をふらふらと歩きだす。心臓がドキドキして目の前の風景が揺れていた。
どうにか倒れないようにいつもの道を歩いた。身体ががちがちに固まっているのに気づいて、ちょっと深呼吸した。
こういうフラッシュバックはちょっとした引き金で起きて、当時の感情が蘇ってしまう。少し待っていれば収まるのだが、知らないうちは蘇った恐怖にパニックになっていた。
「大丈夫、大丈夫。今は大丈夫。昔のことが出てきただけ」
と、自分に言い聞かせながら、改札をくぐる。

職場について廊下の人割表を見てホッとした。私が苦手な男性社員と今日は組まなくてよさそうだ。私はレストランでパートで働いていて、人割りによっては同じフロアを苦手な人と組んで二人きりで仕事をまわさなければならない。
なぜこの男性社員が苦手なのかといえば、元夫に似ているからだ。人の話を聞かないし、自分の価値観を押し付けてくる。今は距離を置いてつきあえているが、最初は違った。

私は彼が怖くて仕方がなかったので、わざわざ自分から進んで彼に近づいていった。一生懸命にご機嫌を取って、その人が私のおべっかに満足そうに笑っているとほっとして、どんな仕事を仕上げた時より充実感を感じた。

自分でもおかしいな、と思っていたら、通院している精神科の先生に、それは元夫からの精神的DVの後遺症だと言われた。
恐怖を感じる人に、攻撃される前に自分からご機嫌を取りに行って攻撃を未然に防ぎたいのだと。元夫にしていたのと同じことを今もしているのだ、と言われた。それからその男性社員とは距離を取るようになって、少し楽になったけれど。

あの逃げ場のないボクシングのリングみたいな家庭の中で、リング中追い回されて殴られ続けた日々は、私の心のメモリーに刻まれてしまい、ちょっとしたきっかけで出てきては私を支配する。

嫌いな人にわざわざ近づいていって積極的にご機嫌を取っているだなんて…。
誰も私がDVの後遺症でそんなことをしているとは思わないだろう。好きでそうしている、と思われるだけだ。

刻み込まれた恐怖って怖いと思う。人を、自分がやりたくもない事をやる操り人形みたいにしてしまう。
恐怖に動かされている時は、自分が何をやりたいか、どうしたいか、なんて分からなくなっている。

元夫も、もしかしたらそういう恐怖に突き動かされていたのかもしれないけれど。でももう分からない。
私はもう元夫には関わらないし、理解して許そうとも思っていない。

でも、もしそうだったら、もっと楽になって欲しいな、とは思う。

結局、あの星占いが当たったかと言えば全く当たらず、普通の平凡な一日だった。

こっちの方が、よっぽど当たる占いだ。

 

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パワハラ男性社員と組んで仕事をしないで済んだし、お気に入りのお惣菜は半額で買えたし、娘も母も私も怪我も病気もせず無事だった。

鍵を出して自宅のドアを開けると、娘が奥の部屋から眠そうに出てきた。
「おかえり…。ママ」
「ただいま」
眠くてむにゃむにゃ言いながら私に抱きついてくる娘を抱き上げながら、思う。

これからも辛いことはあるだろうけど、どうにもならないと諦めず、自分のために動こう。
もう自分を誰かに引き渡したりしない。少しずつだけど自分を作っていこう。

私のために。私と私の大事な人達のために。